「會津で出会う、旅の縁」-ゲストハウスを拠点にワーケーションを推進
いろいろな人たちが集う場所に、新しいワークスタイルの提案
「kaien - Hostel & Café BAR」は、福島県会津若松市七日町にあるゲストハウスです。2020年4月にオープンして以来、「世界各地のさまざまな人が、出会い、語り合い、笑顔が生まれる場所」というコンセプトを掲げ、営業を続けています。私はゲストハウスの経営をはじめる前は、アパレルの仕事をしていました。けれど、猛スピードでEC化が進み、わざわざ店に足を運んで服を買う人がどんどん減っていく中で、自分としてはもっと人に必要とされる仕事、人と直接関われる仕事がしたいと思うようになりました。それで行き着いたのが今の仕事でした。ゲストハウスの名前の由来でもある『會津で出会う、旅の縁』のとおり、1階にはカフェ・バーやワークスペースを併設していて、宿泊者はもちろん地域一般の人たちにも、ランチや日本茶、会津の地酒などを楽しんでいただけるようになっています。そして最初、via-atさんとエプソンさんから「コワーキング専用プラットフォーム(via-at)のご提案をいただいたときは、単純に良いお話をいただいたなと感じました。
というのもゲストハウスをはじめる際、ここをとにかくいろいろな人たちが集う場所にしたいという思いがあったので、間口が広がるのは大歓迎だったからです。ただ、当時この辺りでは、コワーキングスペースの存在自体があまり一般的ではなく、最初は利用者の大半がゲストハウスに宿泊された方たちでした。ですので経営者としてそこまで強い関心があったかというと、そうでもないというのが、正直なところだったと思います。
コロナ禍で一変、デジタルの力でコワーキングスペース運営をサポート
それがあるときから、学生の利用が増えてきて、うちのなかでも重要度がアップしてきました。新型コロナウイルスの影響で、講義がすべてリモートになった関東圏の大学に通う学生たちが、地元に戻ってきていたんですね。それでオンライン授業を受けるのに家はあまり快適でないからと、うちを利用してくれるようになったんです。そのうち、会津でもリモートワークに切り替える企業が出てきて、コワーキングスペースで仕事するのを目的にうちへやってこられるお客さまが一気に増えました。そのときくらいからですね、コワーキングスペースについて真剣に考えるようになったのは。仕事目的のお客さまは滞在時間が割と長いので、ソフトドリンクの飲み放題サービスを始めてみたりとか…。少しでも快適に過ごしてもらえる場にしようと、今、まさにいろいろと試行錯誤しているところです。
via-atさんとエプソンさんには、via-atユーザーがスマホで簡単にチェックインできるコワーキングプラットフォーム「via-at」と、課金システムが実装予定の複合機「PX-M6712FT/PX-M6711FT(エコタンク搭載モデル)」を提供いただいています。もともとは、via-atアプリからの集客を期待して始めた取り組みでしたが、利用者の属性や利用状況を簡単に分析できたり、またエプソンさんのプリンターを設置することでユーザーさんの利便性を向上できたりとコワーキングスペースを運営する立場からもとても使い勝手のよいシステムだと感じています。以前は私物のプリンターを設置し、一枚10円をお客さまから頂戴していたのですが、これが結構、気を遣うことの多い仕事でした。10円のために毎回レジを開けるのも大変で、via-atさんとエプソンさんが協業することでこういった業務が効率化されるのはとても有り難いと思いました。
アパレルの仕事を辞めたときは、「AIに負けない仕事をしたい」という気持ちで、ゲストハウス業をはじめたのですが、今は、人間とAIはそもそも得意とするものが違うのだから任せられることはちゃんと任せて、私は自分が得意なこと、人にしかできない付加価値の高い仕事にもっと専念していこうと考えられるようになりました。
市と協力、人と人をつなぐワーケーションで生まれ故郷を活性化
コワーキングスペース事業をはじめて良かったと思うことがもう一つあります。それは市の観光課の方々から、観光業の落ち込みが心配されている会津若松の交流人口を増やしていくために協力してもらえないかと声をかけてもらったことです。もともと会津は観光業が強く、「kaien - Hostel & Café BAR」がある七日町も、大正浪漫を感じられる街として紹介されることの多いいわゆる観光スポットなのですが、観光客を誘致するだけでは街を活性化させることが難しくなっています。
そんな中、新たな試みとしてワーケーションを推進したいと考えていたときに、うちのコワーキングスペースが目にとまったそうです。私自身、生まれ育った場所が衰退していくのは嫌なので、それは是非にということで、先日さっそく、会津東山温泉で実施されたワーケーションのモニターツアーに協力させてもらいました。市の担当者曰く、ワーケーションを推進するにあたっては、訪れる人たちのニーズに合わせた環境づくりもさることながら、ワーケーションに対する地域の人たちの理解を得ることも大事だということで、うちにはそのための情報発信であったり、交流の場としての役割などを期待してくれているようです。
私としても、この人とこの人が繋がったら面白そうだなと思ったら、できるだけ間を取り持つように努めていて、今はむしろそれこそが、お客さまにうちのコワーキングスペースを利用してもらう際のメリットの一つだと思っているくらいです。それで以前、いつもコワーキングスペースを利用されている地元のwebデザイナーさんに、関東からこられたエンジニアの方を紹介したのですが、あとで話を聞くと、もうすでに一緒に仕事をはじめられたということでした。
また最近は、宿泊者の方に旅のプランを提案する際に、会津周辺でうちと同じようにコワーキングスペースを併設しているゲストハウスを積極的に紹介しています。これがどのような成果に結びつくかはまだわからないですが、うちのゲストハウスがきっかけとなって会津に足を運んでくれる方々が増えてその人たちが私と話をして得た情報をもとにもっと会津を好きになり、いつかワーケーション拠点として会津を選んでくれたり、将来的に会津への定住や二地域居住を考えることに繋がったりしたら、これほど嬉しいことはないですね。
取材実施日:2021年3月
記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、すべてインタビュー時点のものです