カラーラベルプリンターを活用した集客、ブランディングのビジネスモデルで飲食業界に貢献

コロナ禍で苦戦する飲食店を支援するための実証実験

セイコーエプソン株式会社(以下エプソン)は2021年3月から4月に飲食店を対象としたラベルプリントサービスによるブランディングの実証実験を行いました。コロナ禍で苦戦している飲食店のビジネスを支援するための試みです。デリバリー販売用の袋にQRコード*を掲示したラベルを貼り、集客やブランディングにどのように寄与できるのかを検証しました。

また同時に、飲食業界向けのコンサルティングを行っているリディッシュ株式会社(以下リディッシュ)にハブとなってもらいB to B to Bのビジネスモデルの確立も目指しました。リディッシュは、「飲食店経営を豊かに」をビジョンに掲げ、売り上げを伸ばすためのマーケティング事業と、コストを削減するためのファイナンス事業、クラウドファンディングのコンサル事業等を展開しています。代表取締役の松隈剛さんは「ラベルプリントサービスを使った実証実験は、飲食店がデリバリー販売の売り上げを伸ばすためのソリューションの一つになると考え、参加しました」と話します。

*QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。

リディッシュ株式会社 代表取締役 松隈剛さん
<リディッシュ株式会社 代表取締役 松隈剛さん>

ラベルはデリバリー販売の売り上げを伸ばすソリューションになる

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、外食をする機会が減り、飲食業界全体の売り上げが大幅に減少する中で、リディッシュがコンサルティングを行う飲食店にも変化が起きていました。「多くの飲食店が収益源の多様化を模索し、デリバリーやテイクアウト、ECサイトでの販売などに取り組んでいます。特に、デリバリーは取り組まれている飲食店が多いため、当社では売り上げを伸ばすための販売促進やデータ分析によるコンサルティングに力を入れています」(松隈さん)

セイコーエプソン株式会社 P事業戦略推進部 課長 井上吉基
<セイコーエプソン株式会社 P事業戦略推進部 課長 井上吉基>

一方でエプソンもまた、苦戦する飲食業界を支援するためのソリューションを模索していた、とエプソンP事業戦略推進部 課長 井上吉基は話します。「エプソンは、社会課題の解決に貢献したいと考えています。その一環として、プリンター技術の活用によりコロナ禍に苦しむ飲食店を支援することができないかと考えていました。その中で、ラベルプリンターを活用したBtoBtoBのソリューションに将来性を感じ、リディッシュさんに提案する形で実証実験を計画しました」(井上)
松隈さんは、実証実験への参加を打診された時、アナログな手法とデジタルの組み合わせに可能性を感じた、と話します。「飲食店はローカルビジネスなので、これだけデジタル化が進んでも、ラベルやチラシなどアナログなプロモーションは有効な販促手法なんです。さらに、デリバリーの袋にQRコードを掲示したラベルを貼るという、アナログとデジタルを融合した手段が、新しい訴求方法の一つになるのではないかと考えました」(松隈さん)

QRコードを印刷してInstagram*などにアクセスできるラベル1800枚を用意

*「Instagram」は、Instagram,LLCの商標または登録商標です。

株式会社GHOST 代表取締役CEO 小柳津林太郎さん
<株式会社GHOST 代表取締役CEO 小柳津林太郎さん>

実証実験には、飲食店を展開する株式会社GHOST(以下ゴースト)にも協力してもらいました。ゴーストはビジネスプロモーション企業で、「自分たちの身近にいる大切な人に向けて、ありそうでなかった新しい価値を生み出す」ことをビジョンとしており、代表取締役CEOを務める小柳津林太郎さんは、リディッシュの顧問も務めています。同社の子会社が運営する低カロリーヘルシービビンバボウル専門店「イテウォンボウルズ」で、デリバリー販売用の袋にラベルを貼り、ブランディングにどれほど寄与できるのかを探ったのです。
イテウォンボウルズは2020年8月に開店しました。小柳津さんがブランドを考案し、デリバリーとイートイン、テイクアウトの3つの手法で商品を販売しています。「イテウォンボウルズはコロナ禍でスタートしたこともあって、経営の多角化を図っていかなくてはいけないという課題があります。特にデリバリーは利益率が低い中でも、メッセージを添えたり、ランチョンマットを入れたり、色々と工夫して、クリエイティブの投資にも力を入れています。また、リディッシュは飲食業界を下支えする会社なので、様々な飲食店のケーススタディを一緒に作っていこうと松隈さんとは話していました。その中でエプソンさんのラベルプリンターを使った実証実験のお話をいただいて、やってみよう、ということになりました」(小柳津さん)

実証実験では3種類、合計1800枚のラベルを用意しました。QRコードを読み取ることでクラウドファンディングのサイトとInstagram、LINE*にアクセスできるようにしたのです。QRコードのアクセス先が異なる3種類のラベルをデリバリー用の袋に1種類ずつ貼りました。「僕らはクリエイティブやWebマーケティングに力を入れてきました。その延長でQRコードを印刷したラベルにどれほどの集客効果があるのかを実験してみたいと思ったんです」(小柳津さん)

*「LINE」はLINE株式会社の商標または登録商標です。

QRコード付きラベルを貼ったデリバリー販売用の袋
<QRコード付きラベルを貼ったデリバリー販売用の袋>

アナログとデジタルを掛け合わせることで得られた新たな集客手段

実証実験の結果、QRコードからリンク先にアクセスした数は41件。数は決して多くはありませんが、「アクセス率は悪くない」と小柳津さんは話します。「イテウォンボウルズはもともとチラシなどのクリエイティブやプロモーションに力を入れていたので、クラウドファンディングに取り組んでいたり、Instagramのアカウントを持っていたりすることをすでに多くの顧客に認知されていましたからね。ただ、そうしたことをあまり行っていない飲食店で実験していたら、もっとアクセス数が増えたのではないでしょうか。一般的な飲食店であれば、デリバリー販売用の袋にラベルを貼ることの効果はあると思います」(小柳津さん)

松隈さんもまた、実証実験の結果に手応えを得ていました。インターネットとインターネット以外の店舗などの垣根を超えたマーケティング手法である、OMO(Online Merges with Offline)の取り組みとして可能性を感じたのです。「今回の実証実験はOMOの一種です。アナログとデジタルの組み合わせで、チラシとカラーラベルをうまく組み合わせるなど、やり方次第で顧客を誘導できるはずです。顧客を誘導できればその情報を得られ、接点も持てます。新たな集客手段を得られたと考えています」(松隈さん)

アナログとデジタルを掛け合わせることで得られた新たな集客手段

井上は実証実験によって新たな気づきがあったと話します。「当初、今回の実証実験はラベルを活用したブランドアピールに焦点を当てていました。ところが、実際にはブランディングに加えてQRコードからクラウドファンディングやInstagram、LINE へ誘導する展開までつなぐことができ、ラベルプリントの更なる活用の選択肢が見えてきました。今後、こうした展開ももっと考えていきたいと思います」

飲食店にとってわかりやすいメリットと継続するモチベーションの重要性

一方で、課題も見つかりました。例えば、ラベルに印刷されたQRコードからInstagramなどにアクセスする意欲を高める方策を検討する必要があることです。「QRコードを読み取ることのメリットを付与する設計が必要だと感じました。単純にInstagramにアクセスできるだけだとあまり意味がありませんが、このラベルのQRコードからアクセスして購入した人だけの特典を付与するとか、メリットがあるとなると違ってくるはずです。そういった設計を考えて、改めて実験してみたいですね」(小柳津さん)

飲食店にとって、QRコードによる集客効果が出るまでに時間がかかることも課題の一つです。飲食店は時間を掛けて結果が出るような販売促進方法を避ける傾向があるのです。「一般的に飲食店は利益率が高くないため、例えばグルメレビューサイトに広告を出したら予約が入ったみたいなものは受け入れてもらいやすいのですが、時間を掛けて成果が出るサービスを導入してもらうのは、なかなかにハードルが高いのです」(松隈さん)

飲食店にとってわかりやすいメリットと継続するモチベーションの重要性

それでも、飲食店に時間を掛けて取り組んでもらうことの重要性を小柳津さんは説きます。「すぐに効果が出るわけではないので、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを回して、徐々に成果を出すことに時間を割かなければいけませんが、継続していくことでよくなっていくと思うんです。そのためには、これを運用することに対するモチベーションを上げていくことも重要です。飲食店側にもアイデアが必要なので、それを考え抜くモチベーションを高めるサポートをすることも大きな課題だと思います」(小柳津さん)

ラベルプリントサービスの成功事例を集めて飲食店のビジネスに貢献する

今回の実証実験を経て、松隈さんはエプソンとの協業に期待を寄せます。「他社のプリントサービスと比べて、安価かつオンデマンドでデザインを変えられ、高品質なクリエイティブが作成できるのは、魅力だと思います。今回のように、われわれがBtoBtoBの真ん中のハブとなって、飲食店を取りまとめることができれば、飲食店がオンデマンドでなにかやりたいときにエプソンさんと一緒に、アナログとデジタルの接点をもたせるような。そういうソリューションを提供できると思います」(松隈さん)

また、小柳津さんは、ラベルプリントに留まらない協業の可能性を感じています。「例えばステッカーを作成してノベルティとして配布すれば、それをパソコンに貼ってもらうことなどもあり得ます。パソコンに貼ってあればいつも意識されますし、QRコードを読み取って、サイトやアプリなどに誘導できる確率も高められます。僕の友人に紙の名刺をやめてシールにして配っている人がいるのですが、彼のように柔軟に考えれば、新たな顧客層の人たちの目に触れるようなツールを増やせる可能性があると思うんです。そういった設計を、エプソンさんと一緒にいろいろ考えていきたいです」(小柳津さん)

さらに、小柳津さんはエプソンにこう要望します。「エプソンさんにはラベルプリントサービスを活用した成功事例、失敗事例をより多く集約してもらって、飲食店にとって気づきやノウハウになるような情報をどんどん発信していってほしいですね。興味を持つ飲食店は数多くあるはずですから」(小柳津さん)

エプソンもまた、その期待に応える準備を整えています。「これからも、厳しい状況下でもこだわりを持って経営されている飲食店の経営者や、その人たちを支援したいと思っている消費者の方たちをつなげるお手伝いを行っていきたいと考えています。飲食業界の方たちの困りごとについてもっと理解を深めていきたいですし、ブランド価値訴求以外の新たな価値、例えば双方向コミュニケーションへの誘導などを模索しながら、飲食業界の役に立つソリューションに深化させていきたいですね。」(井上)

ラベルプリントサービスの成功事例を集めて飲食店のビジネスに貢献する

取材実施日:2021年5月