エプソンと一緒に社会課題解決に取り組んでみませんか?

会津大学短期大学部との共創プロジェクト
エプソンの成長をイメージしたオフィスデザインをカタチに。

こちらの記事の概要
  • 福島県会津若松市「スマートシティAiCT」を拠点とした協働と地域貢献
  • 会津大学短期大学部の授業で自社オフィスの空間をデザイン
  • 地域伝統×ICT(遠隔・空間接続)の融合で新たな交流と共創を

セイコーエプソン株式会社(以下、エプソン)は、2020年7月に「スマートシティAiCT(以下、AiCT)」に「DXイノベーションラボ会津」を開設。そのオフィスの空間デザインを創造するプロジェクトを、会津大学短期大学部の産業情報科学生の皆さんと一緒に実施しました。
今回は、プロジェクトに携わった会津大学短期大学部の柴﨑恭秀先生、長沖充先生、学生メンバーにお集まりいただき、座談会を開催しました。プロジェクト発足の経緯から空間デザインに込めた想いや期待などを伺いました。

■AiCTとは?

少子高齢化や製造業関連の雇用創出力の低下など、福島県会津若松市が抱える問題の対策と克服のためにいち早く取り組んだのが「スマートシティ会津若松」。まち・ひと・しごとの創出により、長期的に安定人口を目指し、地域の活力維持を目指しています。その取り組みの一貫として、首都圏などのICT関連事業の企業誘致のために整えたオフィス環境が「AiCT」であり、ICTをテーマに市民と企業の交流の拠点となる公用施設です。

※スマートシティAiCTについてはこちら
https://openinnovation.epson.com/aict/

座談会出席者


■柴﨑 恭秀様
会津大学短期大学部 教授
(会津大学短期大学部学生部長・産業情報学科デザイン情報コース教授、建築家)


■長沖 充様
会津大学短期大学部非常勤講師(長沖充建築設計室、建築家)


■渡部 蘭様

■信田 桃花様

■島貫 友愛様

■佐藤 ことみ様

■日下部 まや様
会津大学短期大学部産業情報科デザイン情報コース(2021年3月卒業)

※永吉瑞希様はご都合が悪く、ご欠席。


■中見 至宏
セイコーエプソン株式会社 P事業戦略推進部 部長、DXイノベーションラボ会津 センター長

※本文中は敬称略

会津若松市のICTの拠点「AiCT」でエプソンが目指すオープンイノベーションとは

―はじめに、エプソンがAiCTに入居した経緯と目的について教えてください。

中見:エプソンは「人やモノと情報がつながる新しい創造」を中期的な企業ビジョンに掲げています。今まではモノづくりに重点を置いていましたが、それがどのように社会に貢献できるかを目標にしています。私たちのプロダクトや技術を使って何ができるかを考えながら、パートナーとオープンイノベーションを推進する拠点に「AiCT」を位置付けました。実はこのような取り組みは会社として初めてのこと。会津で地元の住民の方や自治体と一緒に課題を解決し、夢に挑戦できる街づくりを目指しています。

会津若松市のICTの拠点「AiCT」でエプソンが目指すオープンイノベーションとは

―AiCTに入居されている企業の方と一緒に進めるプロジェクトもありますか?

中見:はい。ここに入居している企業の皆さんとは交流があり、通常は入口のドアを開けたままにするほど、オープンで親しみやすい関係です。企業同士が一緒にプロジェクトに取り組むだけでなく、会津若松市役所や会津大学さんも一緒にやろうという雰囲気がとてもいいです。

オープンなコミュニケーションを目指すオフィス空間をコンセプトに「円弧」を用いて表現

―それでは、改めて会津大学短期大学部とエプソンのプロジェクトがスタートした経緯について教えてください。

中見:エプソンのオフィスは地元の方と一緒につくり上げたいと思っていました。本社オフィスのような感じではなく、もっとオープンにエプソンの技術などを体験してもらえるような空間が理想でした。臨場感のある大画面をはじめ、クリエーティブな空間で私たちのプロダクトを見て触れて体感してほしいという希望がありました。そこで、AiCTを通じて知り合った会津大学の藤井先生に相談し、柴﨑先生をご紹介いただきました。

―最初にその企画をお聞きになって、柴﨑先生はどう思われましたか?

柴﨑:日本で建築を学ぶ学生たちは都市部の問題を解決することが主流だと思いますが、本学では “実学”を教育に取り入れています。学生たちはまず始めに福島県の木材を使って椅子やベンチなどを自分たちでデザインして造ることから学びます。その後は地域との関わりを通じて、建築の設計やインテリアのデザインを学び、最後に街づくりとして、空き店舗などの問題の解決を学ぶプログラムがあり、これを実学として実践します。今回のプロジェクトのお話をいただいた時に、空き家や空き店舗を活用したリノベーションの演習を指導する長沖先生とゼミの学生たちでやってみようということになりました。

オープンなコミュニケーションを目指すオフィス空間をコンセプトに「円弧」を用いて表現
オープンなコミュニケーションを目指すオフィス空間をコンセプトに「円弧」を用いて表現

―長沖先生にお伺いしたいのですが、どのようなチームで取り組まれましたか?

長沖:全員で6名の少人数のゼミですが、3名ずつのA班、B班に分かれてデザイン案を考えました。デザイン案を考える前提として学生と一緒にエプソンさんを訪問し、会社の考え方や目標、どのように使いたいかなどをお聞きし、会津にエプソンさんがいらっしゃってどういうことができるか、いろいろな協働をする中でオフィスではどんなことが可能なのかを考えました。
授業は全部で15回ですが、中間発表でエプソンさんに2案のプレゼンをしたところ、B案をベースにA案を取り入れてほしいというご意見をいただき、2つの案の良いところを組み合わせることにしました。

柴﨑:A、Bそれぞれのコンセプトが良かったので、学生から改めてご紹介します。

渡部:A案は、日本人がもっとも美しいと感じる比率「大和比」をテーマに考えました。それは、エプソンさんの事業の印刷と深い関わりがある紙のサイズもこの大和比だからです。この比率を用いたさまざまなバリエーションを組み合わせたデザインを仕上げました。

信田:B案は「A.R.C(アルク)」をテーマに、円弧を中心に行き止まりのない回遊性のあるオフィスを目指してつくりました。A.R.Cは「Active Raise Continue」を意味し、アクティブな気持ちを高めて回遊性をオフィスに持たせることが目的で、社員の皆さんが自律的に場所や時間を決めて働くという意味を持っています。多くの人とコミュニケーショがとりやすく、アイデアも出るのではないかと考えてつくりました。

柴﨑:この時に、「円で完結するのではなく、円弧にすることで成長していくエプソンのイメージを表現しました」と伝えたところ高評価をいただきました。A案の大和比のデザインのほうが玄人受けはするのですが、企業理念に寄り添ったコンセプトがB案だったので、2つの案を組み合わせてより良いものを目指しました。B案をベースに据え、A案をそこに融合する方針を学生たちが決めました。

長沖:空間づくりでは素材にもこだわり、円弧を表現する縦格子には福島県産の杉を使用し、仕切り壁には会津木綿を採り入れて彩りました。

2つの案の融合に苦労した分、達成感と完成作品はかけがえのないものに

―完成に至るまでは大変だったと思いますが、制作段階で面白かったことや苦労したことなど、印象に残っていることを学生の皆さんに伺いたいです。

渡部:両端の壁に大和比を用いた造作棚を提案したので、どうやったらうまく作れるのかを長い時間をかけてみんなで考えました。出来上がった時の達成感は計り知れないものでした。

信田:計画段階では通路のスペースや対話の距離感などを考えて円弧を作りましたが、模型制作は苦労しました。朝から作業を始めて気付いたら夜の10時半過ぎ!完成した時は嬉しくて、みんなで模型の撮影をしました。6人もいるとその中でも得意分野ができ、チームで最後までやり遂げたので笑いながら進めることができました。

会津大学短期大学部産業情報科デザイン情報コースの皆さん 左から佐藤さん、信田さん、渡部さん、島貫さん、日下部さん
<会津大学短期大学部産業情報科デザイン情報コースの皆さん
左から佐藤さん、信田さん、渡部さん、島貫さん、日下部さん>

日下部:2つの案を融合するときに、円弧の中に大和比を取り込むことが難しくて。6人の意見を尊重しながら一つの作品をつくるということは大変だったと思います。実物を見ると、コスト調整のため削減されたものがあってもほぼ再現されているように感じて感動しました。

島貫:円が多すぎると圧迫感があり、空間をうまく使えないのではないかという意見もありましたが、最終的に視線を誘導させることによって空間を広く見せることができたので頑張ってよかったです。自然光と照明の灯りが活かされていてとても素晴らしいです。

佐藤:やはり、2つの案を融合する時にすごく苦労しましたがそれがとても楽しくて。自分の力になった良い経験でした。大学の課題ではクライアントを想定しますが、今回はエプソンさんという企業への提案なので、会社についてもより深く知ることができました。

―エプソンのイメージは変わりましたか?

信田:エプソンさんの製品をお客様にどう見せるかばかりを考えていましたが、今日ここに完成して集まり、中見さんのお話を聞いて、地域との関わりをとても大切していることがわかりました。

渡部:エプソンさんというとプリンターのイメージでしたが、ほかにもいろいろな技術があり、グローバルに展開する企業だと改めて感じました。実際のクライアントと一緒に取り組むことも初めてだったので、今後の仕事に繋がる貴重な経験でした。ありがとうございました。

―実際にオフィスを使ってみていかがですか?

中見:すごくいいです。いま私たちが座っているこの場所が一番気に入っています。目の前に広がる大画面は、この円弧の形の大きなテーブルを含めて良いですね。来客時も、会議室のような雰囲気とは違って並んでお話できるのがいい。回廊になっているので視界の開放感もあり、広く感じます。AiCTに入居されている企業の方にも「本当に同じ大きさですか?広く感じますね」とよく言われます。

柴﨑:円弧は斜めの視線があとを追うように展開をしていくので軌跡が長いんですね。透視図法のだまし絵的なところもあり、円弧に沿うように斜めに視線を追うことで広く感じられることも学生の意図するところだと思います。

AiCT エプソンオフィスの様子
<AiCT エプソンオフィスの様子>

中見:今日は一つお願いがあります。大和比の収納棚をどのように使いこなしたら良いかご提案いただけないでしょうか。

長沖:実は、学生たちと一緒にまとめたものを用意したので提案させていただきます。

渡部:収納棚の利用方法として、エプソンが会津を拠点に活動をしていく中で生まれていくアウトプットの展示空間を提案したいと思います。中身に関しましては、会津大学短期大学部産業情報科デザイン情報コースの各研究室とのコラボデザインを考えています。

2つの案の融合に苦労した分、達成感と完成作品はかけがえのないものに

長沖:せっかくなのでデザイン情報コースのみんなと一緒に何かつくっていけないかと考えました。また、短大に限らず、会津で活動するデザイナーと一緒に作るのもいいと思います。

柴﨑:一番の理想形ですね。エプソンさんが会津のいろいろなところで協働して作り上げたものをアーカイブとして紹介していただくのも良いかと思います。

中見:協働で成し遂げた作品の実績を飾ることはすごく良いと思いました。ありがとうございました。

産官学が連携し、若い感性を活かした共創を楽しみ、ICTの可能性を発信

―エプソンが産官学に取り組む中での今後の展望についてお聞かせください。

中見:産業情報学科の卒業制作展を見せていただきましたが、企業から見てもレベルが高く、マーケティングもしっかりしているのでデザインの即戦力になると思いました。エプソンでは、人と人とのつながりに欠かせない“食”においても、生産者・料理人・フードテック企業などが集う「K,D,C,,,メンバーシッププログラム」に参画しています。新大久保駅直上に開業した「K,D,C,,,」では、プロジェクション技術などを活用し、地域社会にある文化・暮らし・食文化の魅力を遠隔でも体験できる機会を提供しています。そこでは看板やメニューのほか壁紙の印刷、プロジェクターによる空間演出など、さまざまなデザインが必要になります。今後はぜひ、会津での産官学連携として、若手の方々のチャレンジをサポートしていきたいです。会津大学短期大学部の皆さんにも協力していただき、首都圏に向かってその力を発信していきたいです。
また、現在こちらのオフィスではエプソンの大画面を体験できる場を提供していますが、この大画面が地域のコミュニティの場にあればもっと可能性は広がります。最近は、蔵や古民家をリノベーションしてコワーキングスペースやワーケーションなどに活用する話をよく聞きます。働く場所を整備する時に遠隔・空間接続のシステムがあれば、さまざまな活用や展開ができると思います。例えば、大画面を通して首都圏と繋がる交流の場に。会津地域同士や県外の学校を繋いで学ぶ機会を設けることも考えています。ビジネスはもちろん、地方から首都圏への発信もできるので、会津地域の伝統工芸やクラフトなどのワークショップも大画面を通して実際のサイズで体験することが可能です。あらゆる可能性を秘めているのでその魅力を発信していきたいと思います。

※K,D,C,,,についてはこちら
https://openinnovation.epson.com/kdc/

―今のお話を踏まえて、会津大学短期大学部さんとしての今後の展望やエプソンへ期待することを教えてもらえますか?

柴﨑: エプソンさんは本社が長野ということも会社の理念や雰囲気のベースにあり、懐が深い印象です。たくさんの知的財産のストックをお持ちになられているので応用力もあり、世界的な企業の中でも他社とは違うと思いました。私たちがプロジェクトで関わった時にも狭いところに固着・執着せずに受け止めてもらえたことに感謝しています。
短大部は多彩なコンテンツが特長です。産業情報学科デザイン情報コースではデザインに留まらず、経営学の調査技法や統計学も学んでいるので、今後もどんどん我々を活用していただき、楽しい交流に繋げていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

産官学が連携し、若い感性を活かした共創を楽しみ、ICTの可能性を発信

長沖:今回のエプソンさんのプロジェクトのような実作を初めて実習で取り組むことができ、とても楽しかったです。ありがとうございました。

中見:こちらこそありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。

取材実施日:2021年10月

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