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顧客体験向上

”香り選び”をカードで持ち帰ることで記憶に残る体験を提供
香り言語化AIシステム「KAORIUM」が顧客満足度にこだわる理由

こちらの記事の概要
  • 「KAORIUM」体験デバイスがEpson Connect APIを採用
  • 香り感性を表す情景的キーワードをフレグランス付きオリジナルカードとしてプレゼント
  • API連携による印刷の自動化でシンプルな顧客体験を実現

あなたの好きな香りのイメージを言語化して誰かに伝えることはできますか?
人の趣味趣向はさまざま。香りや味といった目に見えないものを定義することって難しいですよね。
嗅覚のデジタライゼーションによって新たな顧客体験の提案に取り組むSCENTMATIC株式会社(以下、セントマティック)では膨大な数の香りの言語表現を学習したAI「KAORIUM(カオリウム)」を開発されました。この「KAORIUM」が本格的に導入されたフレグランスブランドショップ「KO-GU(コーグ)」では、お客様ひとりひとりの“好きな香り”選びをサポートするために、お客様の感性から好みの香り傾向をAI分析し、その結果を情景的なキーワードで表現します。このキーワードとKO-GUオードパルファムが印刷されたオリジナルカードは、エプソンのクラウドプリントサービス「Epson Connect」によって実現しました。
今回はセントマティック代表取締役 栗栖 俊治さんとのインタビューを通じて、“情緒的な体験価値”を記憶として持ち帰ってもらう取り組みを紐解いていきます。

■栗栖 俊治様
SCENTMATIC株式会社 代表取締役


■聞き手:森本 さやか
セイコーエプソン株式会社 P事業戦略推進部


※本文中は敬称略

*Epson Connectとは
離れたところにいる人たちをデジタルの力で”つなぐ”クラウドサービスです。
インターネット接続されたプリンター・複合機がメールアドレスを持ち、どこからでもプリント・スキャンの利用が可能になります。
*Epson Connectについては、http://www.epsonconnect.com/ よりご覧ください。
*Epson Connect APIについては、https://openinnovation.epson.com/developer/ よりご覧ください。

香りの言語化AIシステム「KAORIUM」― 曖昧で感覚でしか捉えられなかった香りや風味を言葉で表現し納得感を醸成する体験デバイス

―はじめに「KAORIUM」の特長を教えてください。

栗栖:KAORIUMは、香りと言葉を相互に変換するAIシステムです。最先端のテクノロジーによって、曖昧で捉えにくい香りの印象を言語で可視化したり、ある言語に紐づく香りを導き出したりすることを可能にします。現在は日本酒、ワイン、お茶、チョコレート、クラフトビール、電子タバコなどさまざまなカテゴリーでの導入が進んでおり、今後は消費者がもつ香りや風味に対する趣向の言語データを基に、レコメンド機能や商品企画、マーケティングツールなどデータビジネスにも拡げていけると考えています。

システム開発にあたり重要視しているのは顧客体験です。私は大手携帯電話会社で10年以上新規サービスや新機能のプロダクトマネジメントに携わった経験があり、セントマティックのコアメンバーもその当時のメンバーで構成されています。モバイルアプリ開発などで培ってきた、ユーザーエクスペリエンスを緻密に創り上げられる技量が私たちのアセットです。見た目やラベルだけでは選びきれない、香りや風味が重視される商品の購買意思決定における手助けと納得感を提供するために、KAORIUMでは選定時に香り自体への問いかけを複数回行う工夫を施し、体験後にリアルで持ち帰れるオリジナルカードを採用しました。

*SCENTMATIC社についてはhttps://scentmatic.co.jp/ よりご覧ください。

香りの言語化AIシステム「KAORIUM」デバイス
香りの言語化AIシステム「KAORIUM」デバイス

フレグランスブランドショップ「KO-GU」にKAORIUMが導入 – お客様ひとりひとりの“好みの香り選び”をサポート

NOSE SHOPがプロデュースするデイリーフレグランスブランド「KO-GU」新宿店
NOSE SHOPがプロデュースするデイリーフレグランスブランド「KO-GU」新宿店

―2022年3月にはフレグランスブランドショップ「KO-GU」にKAORIUMの体験デバイスが導入されました。どのような経緯で導入に至ったのでしょうか?

栗栖:ニッチフレグランスのセレクトショップを手掛ける「NOSE SHOP」の代表中森さんから2020年の初めに問い合わせをいただきました。お互いに消費者の香り選びをもっと身近にする「香りの民主化」という共通のビジョンを掲げていて、すぐに協業体制を構築し、3か月後には実証実験に至りました。

「NOSE SHOP」のファンコミュニティの皆さんには、香りサンプルからのデータ作成にご協力いただくなど、AI最適化にも一緒に取り組んでいただきました。

―香り体験デバイスを用いて、どのようにしてお客様ひとりひとりの“好みの香り選び”をサポートしていますか?

栗栖:デバイス上に並べられた香りボトルから好きな香りを選ぶと、その香りの印象を表すさまざまな言葉が画面に現れます。表示された言葉の中から自分が求めるイメージに最も近い言葉を選択すると、その言葉に紐づく香りが導きだされます。この動作を数回繰り返し、香りと言葉を選択していくことで、AIがその人の感性をもとに好みの香り傾向を分析し、その印象を情景的なキーワードとして導きだします。

一連の体験を通して、好きな香りの軸を知ることができ、自分に合ったフレグランスを選ぶことが可能になります。選択された3つのフレグランス種類と情景ワードは印刷をしてオリジナルカードとしてお渡ししています。

KAORIUM体験画面 – 好きな香りと言葉の選定を複数回行うとそれらの印象を情景的なキーワードとして導きだす
KAORIUM体験画面 – 好きな香りと言葉の選定を複数回行うとそれらの印象を情景的なキーワードとして導きだす

お持ち帰りできる「カード」だからこそ実現できる特別な体験価値 – 体験が終わったあとも印象が記憶に残る

KAORIUMオリジナルカード – 好みの3種フレグランスと情景的ワードがプリントされる
画像左|KAORIUMオリジナルカード – 好みの3種フレグランスと情景的ワードがプリントされる
画像右|KO-GU△オードパルファム△4ml(左からイランイラン、ピーチ、スペアミント)

―香り選びの体験のなかにオリジナルカードのお持ち帰りを織り込んだのはなぜですか?

栗栖:もともと顧客体験の満足度を高めるために「紙」を使いたいと思っていました。好みの香りの印象の記憶を自宅にお土産として持ち帰ってもらいたかったんです。モノでもらった方が嬉しいじゃないですか。デジタルデータを物理的なモノに継承して持ち帰ってもらうコンセプトは自然的に出てきたもので、ならではの体験価値があると思っています。

「紙」で持ち帰ることで体験が終わったあとも見返すことができるし、次の体験に行く間にも個人のデジタルデバイスの外に出て、周囲の視界に自然と同居し認識を広めることができます。Twitterの口コミ投稿を見ても、画像で多くあがっているのはKAORIUMのデバイス画面ではなく、オリジナルカードです。その香りを選んだ説明としてSNS投稿時に“タグ付け”の補助ツールにもなり得ます。

―体験されたお客様の反響はいかがでしたか?

栗栖:「特別な体験をした気分になった」と好感触のフィードバックをいただいています。また店舗スタッフさんの工夫により、オリジナルカードにお客様が選んだ3つの香りを吹きかけてお渡しするという、企画当初は想定していなかった「紙」ならではの運用もされています。これにより実体のない“香り”を物理的に持ち帰る媒体となり、体験のブラッシュアップにつながりました。

また接客スタイルにも変化が起こりました。従来はお客様の好む香りや感性がつかめずに人気の高いフレグランスを勧めることが多かったようですが、オリジナルカードにある言葉を見ながらお客様趣向に応じたより丁寧な接客が可能になりました。さらにカードにプリントされた言葉を参考に、お客様自身が別の店舗でも好きな香りを探せるようになったともお聞きしました。

―なるほど。SNS発信や友人との会話のなかで、情緒的な表現をする際の手助けにもなりますね。香りの感性はその時と場所、自ら置かれている環境で常に変化するものですし、その時々の趣向を記録に残してくれる手助けにもなりますね。

※期間限定導入のため、KO-GUでは2022年11月現在KAORIUMを実施しておりません

KAORIUMとクラウドプリントサービスEpson Connect をAPIで連携 – バックグラウンド処理による自動化で体験価値を最大化

―一連の体験にプリントを含める際、Epson Connect APIを導入いただきました。どのようにして導入に至りましたか?

栗栖:開発の企画要件にはプリント機能を含めていました。KAORIUMはタッチ式タブレットを使うのでAndroidデバイスからのプリントが可能であることと、プリンタードライバー経由ではなくシステム連携でバックグラウンド処理ができることを前提に検討を進めました。システム連携に拘ったのは、お客様が香り選定をする過程で「印刷しますか?」「Yes/No」という選択画面の表示を避けるためです。せっかくの体験価値が台無しになってしまうので。

エプソンには豊富なプリンターラインアップがあり、メールプリントよりもシームレスな印刷が可能になるAPIが公開されている点を評価し導入に至りました。API連携における開発上の課題はなくスムーズに作業を進めることができました。

KAROIUMデバイス内に設置されたEpson Connect対応プリンターからカードがプリントされる。
KAORIUMデバイス内に設置されたEpson Connect対応プリンターからカードがプリントされる

*メールプリントとは
クラウドサービスEpson Connectに含まれる1サービス。インターネットに接続されたプリンターのメールアドレスに、パソコン、携帯電話、スマートフォンなどからファイル添付してメールを送るだけで、どこからでも簡単に写真や文書が印刷できます。
https://www.epson.jp/connect/cloud/mailprint/

―ご使用いただいているEpson Connect APIに対してご要望などあれば教えてください。

栗栖:現在は印刷に20-30秒かかっているのでもう少し早くしていきたいです!オリジナルカードはKAORIUMの体験終了時に印刷される設計ですが、お客様が気づかずに帰ってしまったケースもあるんです。現在は運用面で改善をしましたが、もう少し早くできると嬉しいですね。

また遠隔で処理ができるインターフェースですが、現場ではインク交換や紙詰まり対応といった新たなメンテナンス作業が発生します。店舗運営の負担を減らすために、遠隔からも確認ができるようなアラート通知の導入など改善が必要と思います。

―それでは最後に今後のエプソンに対する期待があればお願いします!

栗栖:さまざまなデジタルデバイスが出現し、デジタル移行がしやすくなってきていますが、意外とまだハードルがあると思っています。体験終了後にも人々の記憶に残るような使い方をしたKAORIUMのように、紙には紙ならではの価値がありますし、これからもデジタルと使い分けながら共存ができると思います。その価値を理解いただき届けていくために、印刷スピードの改善など取り組むべき課題はあると思いますが、体験価値をつくっていく私たちのようなサービサーとともに、デジタルと紙の価値を両立できるようにぜひともご発展いただきたいと思います。

―モバイル業界でデジタル化をけん引してきた栗栖様の体験価値への拘りと、その価値を高めながら新たな体験を生み出すツールとしてオリジナルカードが採用された経緯をお伺いできました。好みの香りや趣向を選定し記憶にとどめてくれる「KAORIUM」が街中のいたるところで体感できる未来はすぐにやってきそうですね!ありがとうございました!

取材実施日:2022年4月