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外来業務の医療DXでタスクシフトを実現
連携が難しいクラウド上の患者データを電子カルテに一元化
- 患者説明を動画とメッセージで半自動化する「ポケさぽ」がEpson Connect APIを採用
- コミュニケーション履歴の一元管理で医療現場に安心感を提供
- 使い慣れた“紙運用”のデジタル化で業務負荷低減と患者満足度を両立
医療現場のオペレーション刷新‐Renewing Operationsをミッションに、医療者と患者のコミュニケーションハブになることを目指す株式会社OPERe(以下、OPERe)。外来業務のタスクシフトをデジタルで実現するアプリシステム「ポケさぽ」には、クラウドサービスEpson Connectによる自動印刷機能が実装されています。患者とのコミュニケーション履歴を印刷した紙をスキャン保存することで、連携が難しいとされる電子カルテシステムへの取り込みを可能にし医療現場における働き方改革を加速させています。今回はOPERe起業タイミングからシステム開発に携わり2023年1月よりCTOに就任された小川様、CMOの小迫様にサービス設計秘話や、導入病院における活用例などをお伺いします。
■小川 博教 様(写真中央)
株式会社OPERe CTO(Chief Technology Officer)
■小迫 正実 様(写真右)
株式会社OPERe CMO(Chief Marketing Officer)
■聞き手:白鳥浩平、森本さやか(写真左)
セイコーエプソン株式会社 P事業戦略推進部
※本文中は敬称略
*Epson Connectとは
離れたところにいる人たちをデジタルの力で”つなぐ”クラウドサービスです。
インターネット接続されたプリンター・複合機がメールアドレスを持ち、どこからでもプリント・スキャンの利用が可能になります。
*Epson Connectについては、http://www.epsonconnect.com/ よりご覧ください。
*Epson Connect APIについては、https://openinnovation.epson.com/developer/ よりご覧ください。
アプリからの自動配信によるタスクシフト/シェアで業務効率化と医師の長時間労働を改善
――はじめに「ポケさぽ」サービスについて教えてください。
小迫:「ポケさぽ」は医療現場における業務効率化を支援するサービスです。医師の長時間労働の改善に向け、2024年から労働時間の上限規定が適用されます。そこで医師が担ってきた業務の一部を看護師や事務職員(以下、スタッフ)が担う「タスクシフト/シェア」の推進が求められています。ただし既存業務で手いっぱいのスタッフにも限界があります。そこで業務の一部を共有・支援するサービスとして誕生したのが「ポケさぽ」です。
――「ポケさぽ」にはどのような機能がありますか?
小川:入院案内、産科案内、検査案内における患者説明を、動画やメッセージを用いて行えます。従来は患者個別に対面かつ口頭で行っていた説明を、アプリ配信に切り替えることで業務負荷低減を実現しました。多くの患者がスムーズに使えるように、日常的に高頻度で接しているLINEで提供しています。
――OPEReの他サービス「ちょいリク」でもLINEを使っていますね。
小川:そうです。ちょいリクはコロナ禍の2020年6月に開始したサービスです。開発当時代表の澤田がLINEでのサービス設計を検討しており、LINE API Expertだった私に開発の打診がありました。
*OPEReについてはhttps://www.opere.jp/ よりご確認ください。
*「ちょいリク」については、こちら(https://openinnovation.epson.com/topics/20210219_2/)をご覧ください。
外部連携が難しいクラウド上のデータもプリント→スキャンで電子カルテに取り込み
――「ちょいリク」に引き続き「ポケさぽ」でもクラウドサービスEpson ConnectをAPI連携していただきました。どのように活用されていますか。
小川:「ポケさぽ」上のコミュニケーション履歴をEpson Connect APIを活用した自動印刷とその後のスキャン取り込みで電子カルテに一元管理しています。医療業界ではセキュリティの観点からインターネットに接続して情報連携することに高いハードルがあります。オンプレミス*で存在するサーバーに、外部から情報をリンクさせる方法を考えたときに、「ちょいリク」で採用していたEpson Connectによる印刷とスキャン取り込みの組み合わせで解決できると思いました。前日まで入力を求める患者情報もあるので、来院当日の朝に自動印刷される仕組みにしています。
小迫:スキャンは病院では当たり前に行われており、紹介状や同意書などあらゆる紙資料を電子カルテに取り込んでいます。またひとりの患者をさまざまなタスクをもった医療者たちが対応するので、視認性が高く、物理的にも取り回しがきく紙は、受け入られやすいのもポイントでした。
*クラウドとは異なり、サーバーやソフトウェアなどの機器や情報システムを自社で保有し運用する形態を指します
非同期のコミュニケーションだからこそ患者に“いつでもつながりを感じる”安心感を提供。履歴を一元管理できる点は病院側の安心材料に
――「ポケさぽ」導入病院の反響はいかがですか?
小川:患者アンケートでの満足度は90%以上と非常に高い評価です。例えばお買い物中に入院の持ち物リストがスマホで見られる、動画で入院生活のしおりが何度も見返せる、入院前の準備をリマインドしてくれるといった点が評価されています。
メッセージ機能があることも安心感につながっています。これまでは対面・電話といった“同期”でのコミュニケーションしかなく、患者も医療者もお互いが気をつかっていました。これを解決する最適解が「ぽけさぽ」のような“非同期”コミュニケーションであり、インターネットでいつでもつながっていることでお互いの安心感を提供できています。
病院で起こりがちなトラブルは「聞いた・聞いてない」のミスコミュニケーションです。一度発生すると信頼回復に時間と労力を要してしまいます。コミュニケーションログを取れること、それがプリンターから出力され情報として電子カルテに取り込める仕組みは病院側にも安心材料になっているようですね。
常にユーザー目線を意識したCTOこだわりの先回り仕様設計
――どのような経緯でCTOを引き受けられたのでしょうか。
小川:「ちょいリク」開発当時はコロナ禍の社会に貢献したい思いがありました。自分はプロダクトしか作れないけれど、サービスを求めている病院があり、病院に橋渡しできるOPEReがあり、これはとても良いバランスと思いました。ほぼボランティアでの参画でしたが、人の生活に役立てた実感を得ました。
一見堅い印象をうける病院にスタートアップのサービスが導入されるのか懐疑的でしたが、コロナ禍の非常事態で「ちょいリク」の採用が進み手ごたえを感じました。その後、再び新規プロダクト開発として「ポケさぽ」の開発の話をいただき一緒に進める中で、今回CTOのお話をいただき、CTOとしての参画を決意しました。人の生活と健康に関わりを持てることに非常にやりがいを感じています。
――CTOという立場ではどのような役割を担っていますか
小川:お客様の要望や代表が思い描くサービス像をもとに仕様を固めて設計していきます。時には自分がユーザーだったらどんな仕様・UXが良いかを考え、要望に無かった内容も先回りして盛り込みます。その発想が追加ヒアリングで求められるケースもあって、お客様から実際に評価されているようで非常に嬉しいですね。
小迫:澤田・小川のやり取りを隣でみていますが、お互い切磋琢磨しながら忖度無しで良い意味で意見を言い合えているので、それが良いプロダクトに繋がっていると思います。
――小川さんにはEpson Connect API公開時からハッカソンなども通じてAPIを多く活用いただいています。さらに多くのサービスで採用されるためにアドバイスをいただけませんか?
小川:Epson Connect APIの普及にはさまざまな言語で動くサンプルコードが必要と思います。豊富なサンプルコードがあることで、APIを試すためのハードルが下がり、検証に多くの時間を使うことができ、採用につながっていくと思います。アプリ全体のボリュームにもよりますが、作業量として何倍もの差が生ずる場合もあります。
Epson Connectはハードを動かすAPIなので、手元に実機がないとやりにくい。ハードが絡む場合はCI(継続的インテグレーション)の仕組みに組み込みにくいために事前の問題発見も難しくなります。そういう意味でバーチャルプリンターがあると便利ですね。テスト段階では実際に紙に印刷される必要はなく、正常に印刷実行指示を出し、どのように印刷されるかを確認できる程度で良いです。
医療現場に残る使い慣れた“紙運用”を活用しDXを推進。業務負荷低減と患者満足度の両立を目指す
――最後に今後のOPEReサービスの展望やエプソンに対する期待について教えてください。
小川:これからも医療者・患者のニーズをくみ取りより良い機能の追加をしていきます。直近は利用ユーザーの増加により、課題も倍々で増えていて、スピード感も上がってきました。課題解決においては、顧客ごとのカスタマイズではなく、多くの人の役に立つもの、大きな業務改善につながるものを共通機能として解決し、気づいたら採用済病院の全てでサービスの底上げが進んでいる状態を目指しています。
医療現場では使い慣れた紙を用いた電子化やシステム間連携など、改善すべき課題が多く残っています。これからも患者や医療者の満足度を維持向上させながら業務効率化を目指すことを大切に、紙やスキャン技術を活用したデジタル化を得意とするエプソンと組むことで医療DX推進を加速させていきます。
――小川さんは「一緒に仕事がしたい」とエンジニアが寄ってくるほど信頼が厚く、豊富な知識の引き出しを周囲に渡すことに長けた方で、インタビューからもその思いがひしひしと伝わってきました。Epson Connect APIにも精通しており、今後のOPEReサービス拡大やそれ以外の分野においても、監督ではなくキャプテンの立ち位置で知恵を分け与えてくれることでしょう。今後もOPERe、小川さんとのコラボレーションにぜひご注目ください。
取材実施日:2022年12月
記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、すべてインタビュー時点のものです