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自治体

Epson Connectを活用したコミュニケーションで行政DXのデジタルデバイドを克服

こちらの記事の概要
  • デジタル化が進むなか、市⇔自治会長の誰一人取り残さない双方向コミュニケーション実現に向け塩尻市とエプソンが実証実験を実施
  • 市のプロセスをデジタル化することで、郵送コスト、情報伝達のリードタイム削減しつつ、職員の封函や仕分けの手間・工数を大幅に軽減
  • 一方で、従来と変わらない紙媒体での情報の受け取りにスマホやメールが十分に使えない住民(区長)の不安も解消

エプソンは長野県塩尻市ともに、市と自治会長との双方向の情報伝達の改善を目指す実証実験を2021年12月から2022年2月まで約2か月間実施しました。市民向けサービスにデジタルツールを取り入れる際にはITリテラシーの異なる者同士にも、負担なく受け入れられるサービスが求められます。その課題を解決する円滑なコミュニケーション手段の構築に向け、クラウドサービスEpson Connect*1を活用した事例をご紹介します。

*塩尻市については https://www.city.shiojiri.lg.jp/よりご確認ください。

■上村 英文 様(写真右)
長野県塩尻市 地域づくり課


■聞き手:大山 恵一郎(写真左)
セイコーエプソン株式会社 P事業戦略推進部


※本文中は敬称略

*1 Epson Connectとは
離れたところにいる人たちをデジタルの力で”つなぐ”クラウドサービスです。
インターネット接続されたプリンター・複合機がメールアドレスを持ち、どこからでもプリント・スキャンの利用が可能になります。
Epson Connectについては、http://www.epsonconnect.com/ よりご覧ください。
Epson Connect APIについては、https://openinnovation.epson.com/developer/ よりご覧ください。

時間や場所に縛られていた自治会長の負担と市職員の輸送・投函の手間を大幅削減!エプソンのクラウドサービスの活用で負荷なく円滑なコミュニケーションを実現

塩尻市 地域づくり課 上村さん
塩尻市 地域づくり課 上村さん

――実証実験ではどのようなことに取り組みましたか?

上村:地域づくり課では市の組織だけではなく、地域も巻き込んだデジタル化‐DX推進を検討していました。塩尻市の人口は6.7万人、その住民交流促進のため市内10地区66区にいる自治会長(以下、区長)は地域への情報発信の要役となります。市から区長には年9回ほど情報発信を行っています。必要文書を人数分印刷して、封入・郵送し、到着した頃に電話で受領確認を行うなど、時間と手間がかかっていました。また区長の皆さんから返信が必要な文書については、記入後に各地域の市役所支社まで持参いただき回収を行っていました。これをデジタルの力で解決できないかと、エプソンさんに相談し実証実験に至りました。

実証実験では9区長に参加いただき、自宅と市庁舎にEpson Connect対応のプリンター複合機をそれぞれ設置しました。

改善前
改善後

*2 Epson Connect メールプリント機能とは
パソコン、スマートフォン、タブレットから対応プリンターのメールアドレスにメールを送るだけで、本文や写真などの添付ファイルをどこからでも簡単に印刷することができます。

*3 Epson Connect スキャン to メール機能とは
プリンターやスキャナーのパネル操作でスキャンした画像データをメールに添付して送信することができます。

――もともと区長とのコミュニケーションに課題を感じていたのでしょうか?

上村:主に現役をリタイアされた60代から70代の方に任期1-2年で担っていただくことが多いのですが、負担も多くなりがちで、次の担い手探しで難航することがあるとも聞きます。これをデジタルの力を活用した負担軽減によって改善することで、担い手探しもスムーズに進められ、市と区長とのコミュニケーションもより円滑に進められると考えました。

区長との情報伝達にメールやチャットツールを用いることも検討しましたが、過去に実施したアンケートではメールでの連絡を希望したのは66区長のうち15区長に留まりました。伺ってみると受信ボックスは毎日見ないし、塩尻市からのメールを探すのも手間になるようですね。メールプリントでの配信であれば通知文書がそのまま印刷されるので、情報が届いていることを視覚でも伝えられると思ったのです。

市と区長が実感した効果-Epson Connect活用による負担軽減と常にある"つながり"

――実証実験を通じて得られた成果や発見はありましたか?

上村:市側は配信業務の大幅削減や輸送費コスト削減のほか、文書作成-内容決定-配信にいたるリードタイム削減につながりました。電話での口頭連絡の置き換えにより伝達齟齬が無くなったのもポイントです。区長の皆さんからは、わざわざ支所に足を運ばずとも自宅から返信が送れるのは非常に楽になったとの声を聞きました。届いたものから処理ができて煩雑さも軽減されたようです。

自宅に設置した複合機で双方向コミュニケーションができるようになったので、従来の郵送運用であれば伝えなかったようなことも、輸送コストや手間を気にせず、プリンターからのリモート配信で気軽にできるので積極的に利用しました。従来は、郵送・電話のほか会議での限られた時間でしかつながりが得られませんでしたが、区長宅と市をつなぐ複合機があることで常に“つながり”を感じながらコミュニケーションを取れる環境を整えられると感じました。

大山:学習塾が提供する在宅学習支援サービスで、遠隔でのプリント教材配信を行ったケースでも、保護者の方から「常に塾や先生とつながっている感覚を得られ、安心感と共に緊張感まで得られた」といったコメントももらっています。プリンターがIoT機器となり家庭や生活のコミュニケーションデバイスとして活用できるヒントになります。

実際にスキャン to メール機能を使い区長から回収した記入済アンケート
実際にスキャン to メール機能を使い区長から回収した記入済アンケート

市役所が直面するデジタルデバイド(ITリテラシー格差)を解消する方法-ひとりひとりに寄り添ったデジタル化

――住民サービスのデジタル化推進での困りごとはありますか?

上村:住民向けサービスを展開する役所だからこそ、一方的なデジタル化は進められません。デジタルに慣れた人も慣れていない人も、誰一人取り残すことなくそれぞれに寄り添ったコミュニケーション方法が必要と考えています。

地域の要役である区長も、その先にいる住民の皆さんもITリテラシーは異なります。今やLINEなどのチャットツールは高齢の方でもお使いになる方が多くいらっしゃいますが、例えばファイル添付の仕方や開封方法、それをクラウドに保存して閲覧できる人がどのくらいいるでしょうか。ひとりひとりのレベルを市側で把握する術がないのです。住民向けの講習会なども開いていますが、限界があります。

今回エプソンさんのクラウドサービスEpson Connectを活用した実証実験では、プリンターをデジタルFaxのように使えるサービスを活用しました。配信・送信はデジタルの力を使うけれど、情報伝達は従来の紙を活用できます。デバイス画面の大きさに左右されることなく、情報を一覧にして見せることができることもメリットと感じました。

成功体験を通じたマインド変化で地域全体のデジタル化の推進を目指す

――住民向けサービスにおける今後の展望を教えてください。

上村:市・区長間でのデジタル化推進に留まらず、市民向けサービスの至るところでデジタル化を進めていきたいと思います。自分もそうでしたが昔はチャットツールのメリットが分からずにいました。デジタルツールに慣れない人に、新しいことを覚えてもらうには負担を強いることになり拒絶される恐れもあります。市から住民ひとりひとりにデジタル教育することは難しいですが、区長との情報伝達が少しずつデジタル移行することで、地域全体のマインド変化につながれば嬉しいです。そのためには、成功体験が必要と考えています。例えば、デジタルツールを用いることで離れていてもいつでもお孫さんとのコミュニケーションがとれるとか、そのような体験を通じて新しいツール・サービスを受け入れるブレークスルーになり得ると考えています。今回は実証実験というかたちでしたが、今後も地域づくり課にとどまらず、住民向けサービスの至るところでEpson Connectの活用を進めていきたいですね。

――エプソンに対する期待があれば教えてください。

上村:塩尻市は多くのエプソン社員の方が暮らす地域です。生産人口年齢で県内1位2位を争うほど子育て世代が多い自治体でもあるため、子育て世代の支援・定着につながる施策や、生活に根差したサービスにエプソン製品が同居するようなサービスが浸透していくことを願っています。

塩尻市が直面している住民のITリテラシーが異なるケースでの住民向けサービスのデジタル化推進は、塩尻市特有の課題ではなくさまざまな地域社会でも見られる課題です。エプソンは今後もデジタルに慣れていない人々との共存社会と持続可能な地方の暮らしの実現に向けた取り組みを加速させていきます。

取材実施日:2022年12月

注記:記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、すべてインタビュー時点のものです

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