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デジタル技術が紡ぐ伝統 「会津木綿」×「会津型」、パリで輝く

こちらの記事の概要
  • 会津木綿の織元はらっぱとエプソンは、パリで開催された「Japan Expo Paris」へ向け、会津木綿と会津型を融合した羽織の商品開発にチャレンジ
  • 会津木綿と会津型はそれぞれ江戸時代から続く伝統工芸、会津型はエプソンのデジタル技術を活用することで、より自由度の高いデザインとして発展し新たなコラボレーションが生まれることとなった
  • エプソンは、日本の各地に息づく伝統・文化遺産にデジタル技術を取り入れ、新しい可能性を切り開き、地域活性化につながる取り組みとしてさらに広げていく

爽やかな風が袖を通る7月のパリ。オリンピック目前の高揚感に包まれるこの街で、「Japan Expo Paris(ジャパンエキスポパリ)」の会場は、フランスの若者たちの熱狂とともに、異なる文化が交差する空間として盛りあがりを見せていました。

Japan Expo Parisは、パリで毎年開催される、毎年20万人以上が訪れる世界最大級の日本文化を紹介するイベントです。アニメ、漫画、音楽、さらには茶道や武道といった伝統文化まで、多彩な日本文化が一堂に会し、訪れる人々に体験の場を提供しています。日本からも多くの企業やクリエイターが参加し、自身の作品や商品を展示・販売する機会となっています。

Japan Expo Parisの会場
Japan Expo Parisステージ

今年は、福島県を代表する15の伝統工芸品事業者たちが、「FUKUSHIMA KAWAII KOGEI」のブースに参加しました。彼らは、震災から10年を経た今、福島の元気な姿を世界に発信するという思いを胸に、このイベントのために開発した商品を手にフランスへ乗り込みました。その中でも、独自の存在感を放っていたのが会津木綿の織元である、株式会社はらっぱの専務執行役員、原山修一さんが手掛けた会津木綿と会津型を融合した羽織の展示販売でした。

来場者に会津木綿を説明する原山さん
会津木綿×会津型 羽織の展示

アイデアがアイデアを生む、会津木綿×会津型コラボのきっかけ

パリで展示された会津木綿に会津型を施した羽織、このコラボレーションの発端は、エプソンが会津若松市に新たにオープンした『彩会ノ蔵 Epson Living Lab. AIZU』の壁面展示への協力依頼でした。エプソンが提案した会津型が印刷された会津木綿のサンプルを手にした原山さんは、その独特な美しさに魅了され、新たな可能性を感じました。

「会津型は知っていたが、こんなに種類があるなんて知らなかった。いつか会津型を取り入れた商品をつくってみたい」と感嘆した原山さんの胸中には、新しい商品開発へのアイデアが芽生えました。これが、エプソンとの協力による商品開発のスタートラインとなり、会津木綿と会津型、二つの伝統文化が交わる瞬間となりました。

『彩会ノ蔵 Epson Living Lab. AIZU』の壁面展示
株式会社はらっぱ 専務執行役員 原山修一さん

会津木綿は、江戸時代から受け継がれてきた伝統的な織物で、しっかりとした厚みと耐久性、そして特徴的な縞模様が魅力です。この織物は、野良着や作業着として広く愛用され、現代ではその素朴な風合いとデザインが再評価。ファッションアイテムとしても人気を博しています。

一方、会津型は、喜多方市内で江戸後期から昭和初期にかけて販売・製造された染型紙で、四季の植物やユーモラスな生きものたち、織物の柄を再現した絣(かすり)など豊かなデザインが特徴です。約37,000点にも及ぶ膨大な種類の会津型は、2003年に福島県の重要有形民俗文化財に指定され、現在もその美しさと歴史的価値が高く評価されています。

はらっぱの会津木綿
会津型の実物資料
提供:喜多方市教育委員会文化課

エプソンは、喜多方市と2023年10月に包括連携協定を結び、最新のデジタル技術を用いて、会津型を中心とした、伝統、文化芸術を活用した地域活性化を進めています。その中で生まれた斬新なアイデアは、原山さんにとって新たな魅力として映りました。

「これまで、自社の商品として、会津木綿の上に柄や文様を印刷したことはありませんでした。会津型という伝統的な文様を活用した新しい商品開発に可能性を感じました」と原山さんは語ります。

会津木綿と会津型という二つの伝統が、エプソンの活動を通じて交差し、新たにクリエイティブな展開を見せることになりました。Japan Expo Parisに向けた新商品の開発は、この日から本格的にスタートしていきます。

会津木綿織元と二人三脚で取り組む商品開発

原山さんとエプソンの協力により進められた、会津木綿と会津型のコラボレーションによる商品開発は、まず喜多方市との連携から始まりました。喜多方市が保管する会津型のデジタルデータを、原山さんのイメージに合わせて選定していきます。実物の型紙をスキャンしデータ化された会津型のデザインを活用することで、柄の大きさや色合いを自在に調整できるようになりました。それにより、デザインの自由度が高まり、従来の型紙では表現できなかった自在なデザインも可能になりました。

試作は、会津若松市にある『HHT Print Lab. 』で行われました。この施設は、2023年9月にエプソンと株式会社関美工堂の協業により開設されたオンデマンドプリント施設です。ここでは、その場ですぐにひとつからグッズやサンプルなどを制作できる場所として活用されています。

4月から試作品の制作が始まりましたが、その過程は決して容易なものではありませんでした。原山さんは、『HHT Print Lab.』に何度も足を運び、会津型のデザインが会津木綿にどのように映えるかを慎重に検討し、微調整を重ねます。最新のデジタルプリント技術を駆使した試行錯誤は、原山さんが納得するまで何度も繰り返されました。

こうして完成した羽織は、伝統と革新が見事に融合した作品となりました。「会津木綿の生地に最も美しい会津型の色合いを見極めるため、実際に印刷しながら具体的な検討を重ねることができました。こんなに近くで気軽に1枚からサンプル印刷ができる場所があるおかげで、限られた時間の中でも納得のいく商品開発に取り組むことができたと感じています」と原山さんは語ります。

初回のテスト制作は色鮮やかな色彩
墨黒の会津木綿にハッとするピンク色でテスト印刷
4回目のテスト印刷では、よりダイナミックな構図に
サンプルを手に喜多方市と会津型について語る
7月、いよいよ、本番の印刷に臨む原山さん
墨黒の会津木綿の羽織が完成
生成の羽織には両面に会津型を印刷
喜多方市文化課 学芸員 木幡江里子さん

会津型の保存に取り組む喜多方市文化課の学芸員、木幡江里子さんは、「実物資料(渋紙にデザインが彫られた状態)やデータとしての会津型に見慣れているため、実際に生地にプリントされた姿を見て非常に新鮮でした。デジタル印刷は、色合いやサイズが自在に変えられて、生地の質感とも親和性が高く、立体感や躍動感を感じました。地域企業とともに、文化財としての会津型の在り方を大切にしながら、今の時代に寄り添った形で、会津型の魅力を世界にPRできたことは素晴らしいと思います」と、今回の取り組みを高く評価しています。

地方の暮らしをより良いものに

エプソンが会津に拠点を構えて4年。地域と密接に結びつきながら活動を展開しています。喜多方市との包括連携協定を皮切りに、地域企業との共創を通じてデジタル技術の可能性を探る『HHT Print Lab.』や、地域企業や住民との共創の場である『彩会ノ蔵 Epson Living Lab. AIZU』がハブとなり、今回のプロジェクトが実現しました。地域の方々との対話をする中で、企業や団体、そして人と人をつなぎ、さらには地域の力を結びつけることで、相乗効果を生み出しています。

今後もエプソンは、日本の各地に息づく伝統・文化遺産にデジタル技術を取り入れ、新しい可能性を切り開き、地域活性化につながる取り組みとして広げていきます。地域の暮らしをより良いものにするため、地域の企業や住民と手を取り合いながら、さらなる挑戦を進めてまいります。

地域企業と共創しデジタル印刷の可能性を探る『HHT PRINT Lab.』
7月にオープンした『彩会ノ蔵 Epson Living Lab. AIZU』

取材実施日:2024年9月

記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、すべて実施時点のものです

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