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HACK SONIC入賞プロジェクトに学ぶ、スタートアップ流 “推し活DX”
- 推し活をテーマに開催されたハッカソン「HACK SONIC」で、感情と技術を融合させたアイデアが次々と誕生
- プリント/スキャン技術を活用し、リアルに届ける体験を創造した5つの入賞プロジェクトを紹介
- スタートアップとの共創に挑むエプソンが描く、オープンイノベーションの可能性とは
「推し活」は、いまや一部のファン活動を超えて、生活や価値観に寄り添う文化として広がりを見せています。そんな“誰かを応援する気持ち”にテクノロジーで新たな可能性を与えようと、全国から起業家やエンジニアが集まりました。
2025年3月、セイコーエプソンが協賛したハッカソン「HACK SONIC」がジーズアカデミーで開催され、17チーム・32名の参加者が「“推し活”をHACKせよ!」をテーマに3日間の開発に挑みました(※イベントの詳細はこちらの記事をご参照ください)。Epson Connect APIなどの技術を活用し、感情とリアルをつなぐユニークなプロダクトが数多く誕生しました。
本記事では、入賞した5チームのインタビューを通して、プロダクトの裏にある「感情×技術」のストーリーをご紹介します。共通していたのは、ただ便利なものを作るのではなく、“誰かの大切な気持ち”をどう届けるかに向き合っていたこと。「好き」の熱量がイノベーションを生む──そんな実感に満ちたハッカソンの記録を、ぜひご覧ください。
推し活を、リアルに届ける:5つの入賞プロジェクト
第一位チーム「遠隔お酌」


入賞の秘訣と工夫
ハッカソンのテーマが推し活だったので、ファンが喜ぶ体験とは何かをチームで議論しました。既存のセルフィーイベントを参考にしつつ、多くのファンが同時に2ショット撮影できる仕組みを考えました。イベントの制約を超えるアイデアを軸に、技術的な工夫を重ねたことが入賞につながったと思います。
解決した課題・プロジェクト概要
従来の握手会では、コンサート終了後にファンが長時間並んで待つことがあります。これを聞いたとき、何時間も待つならもう一度コンサートができるのではないかと思いました。私たちのアプリでは、10秒の撮影時間で1000人規模の撮影が可能になり、ファンとアイドル双方にとって利便性が高まります。また、サテライト会場からも通信を通じて撮影ができる点が新しい価値です。
今後の展望と共創への期待
今後は、実際のアイドルイベントで実証実験を行い、ユーザーの反応を確認したいと考えています。小規模・大規模イベントの両方で使ってもらい、改善点や潜在的なニーズを掘り下げながら、より使いやすいサービスへと進化させたいです。
第二位チーム「Grabion」


入賞の秘訣と工夫
チームのビジネスオーナーの実体験に基づく課題を、プロダクトとして的確に表現できたことが大きかったです。短期間の中で主要機能に絞り込み、ログインやユーザー管理といった機能は削除。プレゼンで一目で魅力が伝わるよう、最小限で価値を示せるMVP(Minimum Viable Product、顧客に価値を提供できる最小限のプロダクト)の開発に注力しました。
解決した課題・プロジェクト概要
本プロジェクトは、遠く離れて暮らす祖父母と孫のつながりをテーマにしています。高齢者の中にはデジタル機器の操作が難しい人も多く、そうした方々にも簡単に孫の写真を届けられる仕組みが必要だと感じました。
今後の展望と共創への期待
今後は、AIを活用して新聞のデザインテンプレートを増やしたり、動画や音声の取り込みにも対応したいと考えています。また、写真からベストショットを自動で選び出す機能や、ログイン機能を加えたより直感的なUI/UXの検討も進めていく予定です。
第三位チーム「スペースカウボーイ 香月 浩一(カツキコウイチ)」


入賞の秘訣と工夫
自身もアイドルに夢中になった経験から、推し活を語るには当事者の感情が重要だと考えました。現在の推しはベテランの男性俳優で、彼への共感と“好き”の気持ちを形にしました。名刺であれば、44歳の自分でも自然に持ち歩け、人に見せて会話のきっかけにもできます。さらに、本業の宇宙エンタメとのつながりを意識したストーリーを盛り込み、会場も盛り上がるよう工夫しました。
解決した課題・プロジェクト概要
推し活は若者やアイドルファンに限られるものではなく、誰もが持つ「応援したい」という気持ちです。今回のプロジェクトは、その思いを表現できる新しいツールとして、幅広い層に向けた提案を目指しました。自分の過去の体験も重ね、欲しかったグッズのかたちを実現したつもりです。
今後の展望と共創への期待
印刷という要素は、宇宙エンタメとも親和性が高く、手元に“推し”を残す喜びがあります。今後は大学や企業と連携し、宇宙から地球の写真を撮って印刷するなど、宇宙とアナログをつなぐ表現に挑戦したいと考えています。次回のハッカソンが宇宙テーマなら、ぜひまた挑戦したいです。
エプソン賞チーム「萩原 佳音」


入賞の秘訣と工夫
私はすでに起業しており、産後クライシスやふうふのコミュニケーション不足をテーマに活動しています。今回はその延長線上で課題解決型のプロダクトを提案し、特にストーリー性を重視しました。技術ではなく、届けたい想いをどう伝えるかに力を入れたことが評価されたのだと思います。
解決した課題・プロジェクト概要
「ラブランゲージ」という、愛の伝え方の多様性に着目し、中でも「言葉」を使った表現にフォーカスしました。録音した音声をデザインに変換し、バランやカードに印刷して届けることで、気持ちを形にできる仕組みを考案しました。
今後の展望と共創への期待
現在開発中のアプリでは、話しにくいテーマ、特に性に関する話題をパートナーと共有する機能を検討中です。そこにメッセージ印刷機能を加えることで、より深い対話をサポートする新たな体験を生み出せると期待しています。
エプソン賞チーム「羽毛さん」


入賞の秘訣と工夫
生成AIを活用したプロダクトを作るという目的を明確に持ち、出力物を印刷する体験に価値を見出した点が大きかったです。最初はペンギンの“推し活”をテーマにしていましたが、より感動を届けたいという思いから、2日目の夜に絵本生成への方向転換を決断。AIに詳しいメンバーの力を借り、急きょ実装した柔軟さとスピード感が評価されたのだと思います。
解決した課題・プロジェクト概要
絵本は一般的に同じ内容を繰り返し読むものですが、もっとパーソナライズされた体験があってもよいと感じました。そこで、AIを用いて自分が主人公になれる絵本を自動生成する仕組みを考案。例えば、誕生日に子どもが主役の物語を贈ることで、より特別な一冊になります。
今後の展望と共創への期待
今後は、市場性を見極めながら、AI絵本に監修を加えたり、教育的価値や物語性を高める工夫を重ねていきたいです。単なる生成物ではなく、感情を動かす“読まれる絵本”としての品質を追求していくつもりです。
アイデアに共通する成功の方程式
5つの入賞プロジェクトには、それぞれ異なるアプローチや背景がありながらも、共通する成功要因がいくつか見受けられました。スタートアップの視点から見たときにヒントとなる「成功の方程式」を3つにまとめて紹介します。
1. "好き"を原点にした課題設定
どのチームも、「誰かを喜ばせたい」「自分がこういう体験をしたかった」という“好き”や“想い”を起点にしています。今回はハッカソンのテーマが「推し活」だったこともあり、参加者の“好き”が自然に引き出され、多くの熱量あるアイデアが集まりました。ユーザー起点の課題設定は、プロダクトの解像度を高め、共感を得る力を高めます。熱量は仕様に宿る──それを体現した結果といえるでしょう。
2. MVPに徹する「伝わるプロダクト設計」
3日間という限られた時間の中で、完成度よりも「伝わる」ことにこだわる設計が目立ちました。たとえば、機能を大胆に削ぎ落としたことで、発表の瞬間に価値が直感的に伝わる──そんな“プレゼンの強さ”が、評価を後押ししました。
3. "プリント/スキャン"というリアル体験の強み
多くのチームが、Epson Connect APIの印刷・スキャン機能を「リアルとの接点」として巧みに活用しました。画面越しではなく、手元に“推し”や“気持ち”を届ける体験。これは単なる手段ではなく、ユーザーに驚きと感動を生む設計要素として機能していました。
エプソン×スタートアップのこれから
エプソンは、プリントやスキャンといった“リアルに寄り添う技術”を核に、さまざまな共創の可能性を広げようとしています。今回のHACK SONICは、その実験の場であり、未来への入り口でした。
参加者たちは、単に新しい機能を提案するのではなく、感情や体験といった“人の奥行き”に触れるサービスをつくり出しました。エプソンの技術が“道具”を超え、“共感をつなぐインフラ”へと進化する可能性を見せていただきました。
プリンティング技術には、まだまだ使われていない創造的な可能性が眠っています。スタートアップだからこそ見つけられる、そんな価値の欠片たち。エプソンは、これからもその発見と実装を、パートナーの皆さんと共に加速していきます。共創のきっかけは、あなたの“好き”かもしれません。
ここまでお読みいただきありがとうございました。Epson Connect APIをより深く知りたい方は こちら。
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インタビュー実施:2025年3月
投稿:セイコーエプソン
記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、すべてイベント時点のものです