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イベント会場で撮った"たのしい"をプリントしてその場で味わう──「いまフォト」共創事例
- スタートアップAndvoiceとエプソンが、写真×印刷による体験サービス「いまフォト」を共創し、アイデアを事業化に向けて検証してきた取り組み
- イベントで撮影した写真を"その場の体験"で終わらせず、「持ち帰れる価値」まで昇華
- ユーザー体験を通じて提供価値を検証し、スタートアップの事業化に向き合った共創をご紹介
イベントや観光地、ファンミーティングなどで撮影した、とっておきの1枚。その場で生まれる体験はスマホにデータとして残る一方で、体験そのものは時間とともに薄れていきます。この瞬間をたのしみながら、手に取れる形で残せないか──そんな問いから生まれたのが、スマホの写真とイベントやご当地ならではの限定フレームを組み合わせ、その場でプリントとして持ち帰る体験サービス「いまフォト」です。
本記事では、ハッカソンをきっかけに出会ったスタートアップAndvoiceとエプソンが、PoC(実証実験)を重ねながらサービスをどのように磨き上げてきたのか、その背景と実証プロセス、見えてきた可能性をひも解きます。
■片山 椋 様(写真右)
Andvoice株式会社 代表取締役
※本文中は敬称略
■聞き手:斉田 健太郎(写真左)
セイコーエプソン株式会社 Pオフィス・ホーム事業開発部
(DXイノベーションラボ会津)
ハッカソンで生まれたアイデアが、共創へと発展した理由
斉田:まずは、Andvoice社と、「いまフォト」について教えてください。
片山:Andvoiceはエンタメ領域を中心に自社サービスの開発やクライアント支援を行っているスタートアップです。エンタメ領域に向き合う理由は、自身の好きなことの延長という面もありますが、日本が世界に誇るエンタメ市場の成長に貢献することで、私たちの生活がより豊かになっていくといいな…という思いがあるからです。
「いまフォト」は、来場者がスマホに保存している写真と、イベントごとに用意されたフレームを組み合わせ、その場ならではの1枚をプリントとして持ち帰ることができます。この発想の原点にあるのが、スタートアップやエンジニアが集うエプソン協賛ハッカソン「HACK SONIC」への参加でした。「推し活をHACKせよ!」というテーマのもと、イベントを盛り上げるためにはどうすれば良いかを考えた結果、このアイデアに行き着きました。
斉田:エプソンは、オープンイノベーションエコシステムを通じて、サービスやアイデアを有するパートナーと共に様々なソリューションやサービスの構築を目指しています。その一環でハッカソンに協賛したのですが、そこで出会った片山さんとハッカソン終了後も連絡を取り合い、協業で事業化を目指すことになりました。
写真プリントは本当に役割を終えたのか──体験価値の再定義
斉田:家庭での写真プリントは徐々に減ってきています。片山さんはこの件についてどのように捉えていますか。
片山:家庭で写真を印刷する機会は減ってきていると思いますが、写真プリントそのものの価値が失われたわけではありません。むしろ今は、誰もがスマホの中に大量の写真を持っている時代です。
私たちのようなサービス提供者の役割は、スマホの中の写真とプリントをどう結びつけ、どのような形で価値として届けるかにあると考えています。スマホで見るだけ、あるいは見返すことなく終わっていた写真を、"体験として楽しめる形に変えていくこと"。それをイチから設計してみました。「いまフォト」では、スマホの写真をイベントや観光地などのリアルな場での体験に変えます。その瞬間、その場所でしか得られない1枚としてプリントすることで、写真が単なるデータではなく、体験の一部として記憶に残るものになると感じています。
なぜ「いまフォト」は選ばれる?ユーザーと事業者にとっての価値
斉田:「いまフォト」を提供する中で、どのような価値が生まれていると感じていますか。
片山:いまフォトはエンドユーザーとイベント運営者の双方にとって、参加ハードルが非常に低いです。誰もがすでにスマホの中に写真を持っているため、特別な準備をしなくても自然にプリント体験に参加できます。
エンドユーザーにとっては、操作がシンプルでありながら、完成したプリントを見たときに驚きがあり、印象に残る体験になります。一方、イベント運営者 にとっては、家庭用としても使われる小型で高画質のプリンターを活用できるため、大がかりな設備を用意せずに導入できます。結果として、集客施策だけでなく、来場者の満足度を高める体験コンテンツとしても活用しやすくなりました。
あるエンタメ系のレコードショップでの取り組みでは、「いまフォトがある限り、この店舗でしか買い物をしなくなっちゃうかも」といったエンドユーザーの声もありました。物販は成立しているものの、体験型コンテンツが少ない施設にとって、「いまフォト」は来店動機や滞在価値を高める要素になり得ると考えています。
ファン心理に向き合った磐梯町での実証実験
斉田:2025年10月に、福島県磐梯町で全国の愛車オーナーが集まる「ロードスター東北ミーティングin磐梯町」が開催されました。イベントでのプリント体験を通じた価値提供を検証するために、エプソンが支援するかたちで体験ブースを設置しました。
会場には持ち運びが可能なコンパクトプリンターを2台設置し、プリントはL版1枚200円で提供しました。とあるオーナーの方がプリントの仕上がりを大変気に入ってくれたことがきっかけに体験者が次々と増え、当日はイベント参加者のおよそ半数のオーナーの皆さまに体験いただき、ブースは常に賑わいを見せていました。
会場には自慢の愛車がズラリ!いまフォト体験ブースは列が出来るほどの盛況ぶり
フレームデザインについては、片山さんとエプソンで意見を交わしながら検討し、コアなファン層に響く表現として車雑誌風のデザインを採用しました。「自分の愛車が車雑誌の表紙になっちゃう」という楽しさがオーナーの皆さんからもとても好評で、A4など大きいサイズで自宅に飾りたいといった声も上がるほどでした。
片山:集まった車は名車ですので、愛おしく写真に収めたいというニーズが特に強かったのだと思います。その文脈に合ったフレームを用意できたことが、多くの方に楽しんでいただけた理由だと思います。
縦長の写真は1枚絵になるように、横長の写真は上下に余白を設け雑誌の表紙イメージを表現
スタートアップが実感した、エプソンと共創する価値
斉田:エプソンとの取り組みを通じて、印象に残っている点があれば教えてください。
片山:今回の取り組みを通じて、エプソンは非常に魅力的な協業パートナーだと感じました。印刷に対する技術やこだわり、社会的な信頼やリソースを持つ企業が、スタートアップとの取り組みに前向きに向き合ってくれる点は、とても心強かったです。エプソンにとっては本業とは異なる文脈であっても積極的に関わり、一緒に考えようとしてくれる姿勢は、どの企業でも当たり前にできることではないと思います。
イベントを越えて、サービスとして根付かせていくために
斉田:最後に、Andvoiceとして今後どのような展開を考えているのか、教えてください。
片山:PoCを通じて、自治体や企業のイベントはもちろん、デザイン次第で様々な企画に、このアプリひとつで活用していただける可能性を感じています。単発の取り組みにとどまらず、特定の場所で、継続的に使ってもらえる形を模索していきたいと考えています。
具体的には、地方の観光地や自治体、企業やブランドのプロモーションなど、人が集まるさまざまな場面で展開できるのではないかと思っています。
また、アニメや音楽、キャラクターといったIPコンテンツとの連携も、今後取り組んでいきたい領域のひとつです。展示やイベントと組み合わせることで、ファンが繰り返し体験できるコンテンツとして広げていける余地があると考えています。さらに、デジタルプラットフォームとして、体験を点ではなく線として広げていく構想も描いています。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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インタビュー実施:2025年12月
記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、すべてインタビュー時点のものです