出会いから始まるイノベーション-共創へのチャレンジ
今回は、店舗やカフェなどの空きスペースを、簡単にコワーキングスペースとして利用可能にする専用プラットフォーム「via-at」を開発・提供している株式会社via-at代表取締役の河嶋 茂様と、主にプリンティング領域の知見を活かしながら、株式会社via-atと共に新しいワークスペースの提案を行っているエプソン販売株式会社 DX推進部の部長 吉田 知美、同じく、セイコーエプソン株式会社 DX戦略推進部 課長の小原 秋寿がディスカッションを実施。ニューノーマル下での人や企業との出会い、共創による新しい価値の創造などについて語り合いました。
■河嶋 茂様
株式会社via-at代表取締役
■吉田 知美
エプソン販売株式会社 DX推進部 部長
■小原 秋寿
セイコーエプソン株式会社 DX戦略推進部 課長
※本文中は敬称略
ユースケースに合わせた最適なサービス提供に挑戦、「場所の価値」を高める共創
河嶋:
私の会社では現在、各種店舗や施設、カフェなどの空きスペースを、簡単にコワーキングスペースとして利用可能にする専用プラットフォームを提供することで、街中にワークスポットを増やしていくビジネスを展開しています。そうした中で競合他者との差別化をどうやって図っているかというと、スマホをかざすだけで利用できるチェックインシステムなど、当社が作り出すサービスの強みというのも当然ありますが、最終的に行きつくところは、その場所の価値をいかに高められるかどうかだと考えています。なぜならコワーキングスペース事業というのは、利用者から見れば、その場所で仕事をして、使用した時間分、場所の使用料を支払うという至ってシンプルなビジネスなので、利用者がお金を払ってでも使いたいと思う理由がどこにあるかといえば、それはもう、他にない付加価値の高い場所ということ以外にないと考えるからです。
小原:
現在は、新型コロナウイルスの影響で、どこも場所の価値がどんどん下がっているような状況ですから、それにいかに抗うかというのが、より一層、重要な局面だといえますね。
河嶋:
そうなんです。そこで私が最近、注目しているのが、人や企業がつながって新しい価値を生み出す「共創」というキーワードです。今回、エプソンさんとご一緒させていただいた枠組みはまさにそうした流れに沿っていると思います。ワークスペースには欠かせないプリンティング領域において、まずは良質で利便性の高いサービスを提供できることを前提に話が進められるというのは、私たちが事業を拡大していく上で、間違いなく大きな強みだと言えます。しかも、ただ機器やサービスを提供いただいているのではなく、アイデアを考えるところからご一緒しているわけですから、ユースケースに合わせて最適なサービスなども今後は提供していけると考えています。
吉田:
プリンターそのものの使い勝手などは、これまでも常に考えながら販売してきたわけですが、今、仰られたユースケースに合わせた最適なサービスというのは、十分に検討できていなかったと思います。
実際に、河嶋さんと一緒に、オーナー様のところに足を運んでみると、見えてくることがたくさんあって、例えば、コワーキングスペースであれば、不特定多数の方が一斉にプリンターを利用されるので、どのような機能を備えておくべきなのか、ユーザーインタフェイスをどうすればより一層わかりやすいかだとか、考えることが次々見えてきて、皆さんと一緒に作り上げていくことで、自分たちでは気が付かなかった部分まで、気が付くことができるので、より多くの方にお使いいただく状況を作り上げることに挑戦したいと思います。
人が集い、出会い、つながる。そしてイノベーションが始まる。
河嶋:
共創といえば、今回、私たちが専用プラットフォームを提供し、新たにコワーキングスペース事業を始められた「ROUTE CAFE AND THINGS」(東京・丸の内)のスタッフの方が、「もともとは知らない者同士で、普通に生活していたら出会う機会もなかったような人たちが、via-atユーザーであるという理由で、このワークスペースを利用されています。
その様子を見ていると、もしここで何かコミュニティのようなものができて、しかもそこから新しいビジネスが生まれたりしたらとても面白そうだなって思います」という話をしてくれました。聞いていて、すごくいい話だなと思ったのですが、スタッフの方はvia-atユーザーと仰っていましたけど、そもそも同じ場所に集まる人たちというのは、何かの接点があるからそこに集まるのです。つまり繋がる要因がある人たちだから、そこで新しい交流が生まれるのは何ら不思議なことではないと思っています。
小原:
良い出会いというのはそうそうあるものではないですが、あるところにはあるということですね。コワーキングスペースからコミュニティが生まれるなんて、とても夢がある話だと思います。これは、オープンイノベーションの始まりと呼んでもよさそうですね。
吉田:
エプソン販売でも、ワークスペースの環境をいかに充実できるかで魅力度が変わるという話をよくしています。これまでであれば、単独でエプソンのプリンターやプロジェクターを提案していましたが、ワークスペースを充実させるためのアイテム、例えば「サブモニターやUSBのブランケットも貸し出すサービスがあると、より魅力がでるよね」という話題が出ています。共創の輪が広がれば、それだけお客様のニーズに合致した新しいサービスが生まれてくると感じています。
出会うべくして出会い、ともに全力で取り組む社会課題解決と新しい価値の創造
河嶋:
少し話は変わりますが、去年の4月〜5月にかけて、緊急事態宣言が出ている間、誰も外に出るなと言われていたので、正直、当社のビジネスはお手上げ状態でした。人も動けないし、スペースもなくなっていって、一旦、サービス中断モードに入ったんです。しかしその後、緊急事態が解除となって、ニューノーマルな働き方みたいな話が出てきたあたりから、これまでずっと提案しては、なかなか理解を得ることが難しかったマルチロケーション勤務などの考え方や、社会が抱えている働き方の課題などが、どこへ行っても割とあっさり共有してもらえるようになりました。今回のエプソンさんや、コワーキングスペース事業を始められたオーナー様など、考えに賛同してくれるプレーヤーがどんどん増えてきていることもすごい追い風だと思っています。さらに言えば、コロナ禍で、世の中の多くの人たちが、自分にとって居心地のいい場所探しをはじめている今、最初にもお話した、場所の価値を高めるということに、改めて全力で取り組んでいきたいと考えています。
小原:
コロナ禍の状況は、いろいろな分野のDXを加速させていますね。河嶋様も追い風と仰っていましたが、まさに強力な後押しを受けている状態だと私も思います。まずは、「ROUTE CAFE AND THINGS」だったり、同じく河嶋さんと一緒にサービスを展開している会津若松の「kaien Hostel & Café BAR」での実証実験を、どこにでも出せるモデルケースになるくらいまで、しっかりサポートしていきたいと考えています。先ほど弊社吉田も申していたように、エプソンがこれまで進めてきた製品をご提供するビジネスとは大きく異なり、我々自身も常にアップデートが求められる難しさを伴うのが、共創の特徴なのかなと感じています。もちろん面白さもたくさんあって、河嶋様やワークスペースのオーナー様など、志を同じくする人たちと出会うことができたわけですから、いろいろな方たちの知見を活かしながら、課題解決の提案をして、新しい価値の創造に少しでも寄与できればと考えています。
河嶋:
「ROUTE CAFE AND THINGS」さんとも一年間ほど、かなり密にコミュニケーションを図りながら、一緒に事業を展開してきましたが、特に最初の頃は、ほとんどオンラインだけのやりとりで、最近は本当に、人と人の関係の新しい形というものを実感しています。しかし一方で、今日こうやってエプソンさんとも交わったかたちで実際に顔を合わせて話をすると、皆同じようなことを考えているということがわかったりしますよね。そうすると結局、偶然の縁とかではなく、さっきのワーキングスペースのコミュニティの話のように、我々は出会うべくして出会ったんじゃないかなと、自分なんかは思ってしまいますね。
取材実施日:2021年3月
記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、すべてインタビュー時点のものです